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「萌えるベルギー」
山根悟郎のベルギー音楽事情


イントロダクション〜前書き
山根悟郎のプロフィール
 

 

ブリュッセル通信 山根悟郎

 「萌えるベルギー」山根悟郎のベルギー音楽事情 #008

-第8回:静かな国うるさくなる国
 
  私はかつて音楽関係の書籍、雑誌などから得た知識をもとに、日本という国はヨーロッパの国々と比較して非常にうるさい国であるようだと考えていた。うるさいというのは、車の騒音などもまあそうだが、なによりもあちこちから聞こえるBGM(バック・グラウンド・ミュージック)、あるいは公共交通機関の車内放送のたぐいを指す。

 

 そういう雑誌などの論調というのは、ホテルの、エレベーター内ですら鳴っているBGM攻撃が耐えられない、とか、商店街や百貨店などの、店舗毎に異なるBGMが気持ち悪い(「お互いの曲の調が違うのに気にならないのか彼らは!」)とか、「次ハー、千駄ヶ谷―千駄ヶ谷―」といちいち説明する車掌の車内放送、ホームに降りれば到着の音楽に発車の音楽・・・・・・これは騒音だ公害だ!といったものである。こういう文章を読むと、大体においてその前か後に「ヨーロッパは静かである」という主旨の事が書いてある。つまり、ヨーロッパではこんな風に強制的に音を聞かせられる状態に遭遇することはない、静かなのだ、日本はダメだ、というのである。

 

 なるほどなあ、そういうものなかなあ、日本もいいけどなあ、と思いつつ私はベルギーに来てみたのだが、しかし実は・・・・・やっぱり静かであった!ズコ。ベルギーに限らずヨーロッパは、私の知っている範囲では東京などと比べると静かだ。街自体が小さいという事ももちろんあるが、その点を差し引いてもやっぱり静かなように思われる。ただ、静かだと言ってもそれは私が持っていたイメージとまた違っていたのも事実。ヨーロッパも次第に日本その他からの影響を受けているのかもしれない。というわけで以下、私の見たベルギーの現実である。

 

 1:店舗やホテルのBGM。これは普通に聞かれる。私のよく行くフナックというCDショップでも、隣り合う売り場で違う音楽を平然と流す。例えばジャズとクラシックの売り場は隣接しているが、この2つのコーナーではそれぞれのジャンルのBGMがかかっている。

 

 2:電車の車内放送。「ヨーロッパは個人主義なので責任は自分で取る、だから車内放送なんてものはそもそもいらないのだ」という論を私は昔読んだ経験があるが、少なくともベルギーの一部ではやっている。そしてそれは確実に増加の傾向にある。国鉄もほぼ車内放送をしているし、メトロ(地下鉄)は車両によって時々テープのものが流れる。のみならずメトロの各駅には常時、日本で言うところの「スーパーマーケットの音楽」いわゆるポップスの奇妙な編曲ものの音楽まで流れている。

 

 3:日本とは異なり「奇妙に静まりかえった満員電車」というのはない。携帯電話も可である。満員でも最大音量の着信、まるきりオッケーである。鳴らし放題しゃべり放題、ケンカし放題。ちなみに先日私が遭遇したのは、携帯電話で別れを告げられてしまい満員電車の中で号泣してしまった若い女性である。いくら何でもこれは少しばかり気まずい。みんなの視線が宙を泳ぐ。

 

 4:住宅街にやってくる音たち。日本だと例えば「古紙回収」(まだあるのかな?)や「さおだけ」「焼き芋」「灯油売り」の車が来る。彼らはそれぞれ音を流して自己主張をしている。さすがにそういうたぐいのものはベルギーになかろうと思ったら大間違い。奇妙なオルゴールが私の部屋の前の道をほぼ毎日、夕刻に通過するのだ。それが何なのかかねがね気になっていたが、ついに先日、その音の発信源を発見した(窓から身を乗り出して見ただけ)。何とそれは・・・・・「ワッフル売り」のワゴンだったのである!ババーン!うーむ、さすが。どこでもワッフルの匂う国ベルギーである。

 

 5:「選挙運動カー」これは今のところまだないようだ。


 

 

 

written by

山根 悟郎(やまね ごろう)
1977年京都生まれ。立命館中高出身。ヘ音記号すら満足に読めなかった中学3年の夏、音大進学を突如決意し猛ダッシュ。1997年桐朋学園大学ピアノ科入学。2001年卒。2003年秋よりブリュッセルに在住。現在は隣町ルーヴェンのレメンス音楽院に籍を置き、そこでアラン・ワイス氏(アメリカ人)に師事している。近頃は読売新聞欧州版、弦楽雑誌ストリング、あるいはコンサートのプログラム解説などへの執筆業も行っている。
サイトURL:http://www.gorodiary.com/



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